2022年10月31日 "湯気"がごちそう!~おいしさのカギは「水」~

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 北の地方では雪の便りが聞かれるようになり、紅葉前線が下りてくると湯気が恋しい季節の到来ですね。

 湯気と言えば蒸篭や鍋ですが、欧州などの街中で、例えば肉まんや蒸し饅頭のように、店先で湯気が立ち上る光景又は映像を見たことがありますか?多分ないはずです。欧州の街角だとさしずめ、焼き栗とかワッフルやバーガー類などの焼き物が主流で、ハフハフしながら何かを頬張る人はいません。キッチンにしても、'ブレゼ'という蓋をして水蒸気を閉じ込め蒸し焼きにする調理法はありますが、盛大に湯気を上げて蒸し上げる調理法は皆無です。何故だと思いますか?そこには、欧米と日本(アジア圏)とで別の食文化が育まれたキーワードが隠れているのですが・・・それは「水」です。そこで今回は「水」をキーワードに食文化の違いからおいしさのポイントをお伝えしましょう!

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  アジアの中でも特に日本は水に恵まれた国です。近年のカフェとは違い、いわゆる喫茶店では、座ると同時に氷が入ったお水とおしぼりが出てきて、もちろんお水とおしぼりはサービスでチップも要求されません。ワインよりミネラルウオーターの方が高価な外国人観光客にとっては驚きだとか。さらにたっぷりとお湯を使うバスタブがある部屋はホテルでもワンランク上というのが当たり前なのに、バスタブは標準、勢いよく出るシャワーの水量や大浴場など、あらゆる施設でふんだんに使われる大量の水に感動するそうですが、それほどに水が豊富な日本では、料理にも惜しみなく水を使います。

 まず食材を流水でじゃぶじゃぶ洗い、水にさらす、茹でこぼすなどの下処理ばかりでなく、いわゆる出汁や汁(つゆ、しる)のように、食材のうま味を直接味わうだけでなく、一旦水に溶かし込んで混合させ、具材だけでなく具材から水に溶けだしたうま味を味わう水溶性成分を多用する食文化となりました。いわゆる鍋料理や今やコンビニにも欠かせないおでんなどが代表的メニューと言えますが、鍋料理の最後、〆として麺やご飯を加えて一滴残らず味わい尽くす食習慣は、日本人が水に溶け込んだうま味を大好きな証ですね。近年はコンビニのおでんが麺用のカップに入っていることもあり、おでんの汁にご飯を入れて食べたり、丼に移して溶き卵を混ぜレンチンする、なども定着しているとか。

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 一方、欧州などで料理にふんだんに使うのは水ではなくワインです。その水分は何かを溶かし込むのではなく、肉や魚の臭み消しや風味付けが主な役割で、多めに水を使うメニューと言えばポトフくらいで他には見当たりません。一見水分が多く見えるブイヤベースも、日本の海鮮鍋などに比べたら使う水の量は少なく、油脂や酒類、香草の風味などが相まった、濃縮した魚貝エキスを味わう料理で、水に溶け出た風味を味わう感じではありません。

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 つまり、欧州など水が貴重な地域では、水ではなくお酒や、野菜やキノコ類に含まれる貴重な水分を逃がさないように鍋の中で循環させ、その水分で肉類を柔らかく、かつ、肉と野菜から出た水分に含まれるうま味を混合させて食材に戻し、食材をおいしく仕上げる"蒸し煮"が主流になりました。

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▲「ベッコフ」・・・〈パン屋のかまど〉という意味

  鍋の密閉性が今ほどではなかった時代、ヨーロッパの北部アルザス地域では、鍋と鍋蓋の隙間をパン生地で覆って密閉し、パンを焼いたかまどに入れて余熱で加熱、中の野菜や肉類から出る水分を活用したエコなメニューが郷土料理になりました。それが写真の〈パン屋のかまど〉という意味の「ベッコフ」です。

 基本は肉をハーブと白ワインでマリネし、柔らかく炒めた玉ねぎとニンニク、薄切じゃがいもを交互に重ねてパン生地を巻いて作りますが、現代では密閉性の高い鋳物や無水鍋でパンを巻かずに低温のオーブンに入れてもOKです。

 日本の家庭ではニンジンやゴボウ、レンコンなどの根菜を加えてもおいしくいただけますし、途中でカボチャやブロッコリーを加えれば彩りも華やかに秋らしいメニューになります。味付けは塩コショウが基本ですが、次の日はトマトペーストを加える、又はみりんと醤油、最後はカレースパイスを加えてカレーにして楽しむこともできます。

 いかがですか?鍋でもおでんでもベッコフでも、じっくりゆっくり煮込んだ鍋の蓋を開け、立ち上る湯気を囲む温かい団らんは洋の東西を問いません。ベッコフはバターでなくオリーブオイルでもOK、冷めてもおいしくいただけますので、チビチビとお酒をお供に秋の夜長を楽しむのもまたおススメです。

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