2024年4月10日 サクッ!旬を味わう天ぷら~基本のき~

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 春真っ盛り!縦に長い日本では、北からは今が旬~春名残の品種が、南からは早くも初夏の品種が青果市場を賑わし、山椒の木の芽や実、筍、アスパラガスなどの季節限定の路地物が出回り、年間で一番豊富な種類の山菜、野菜が出回る季節です。ハウス物や地球の裏側から届く輸入野菜のおかげで、日常使いの野菜は年間を通じ手に入る昨今ですが、やはり、旬ならでは今だけの香りや瑞々しい食感を楽しみたいですね!

 そこで、素材そのものをサクッとした衣の中に閉じ込めた日本料理、"天ぷら"はいかがでしょうか?カウンターで職人さんの揚げたてを頂く天ぷらや、うどんやそばに乗っている野菜やちくわの天ぷら、甘辛いたれをたっぷりと吸い込んでご飯の上に盛られたエビや野菜の天ぷらが食欲をそそる天丼などなど。今やインバウンドでも人気の天ぷら。そこで今回は、知っているようで知らない "天ぷら"の世界をご紹介しましょう。

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 一言に天ぷらと言っても、まねのできない職人技が詰まった芸術品から、家庭で手軽に揚げるもの、総菜売り場に並ぶ天ぷらまで様々です。

 天ぷらの始まりは、室町時代に鉄砲の伝来とともに「南蛮料理」としてポルトガルから伝わったとされています。ポルトガル語の「テンポーラ(temporas)」は、「四季に行う斎日」の意味で、その間は肉食をせず、野菜や魚に小麦粉で衣をつけて揚げた料理を食べていたことから派生した説や、「テンペーロ(tempero)」や「天麩羅阿希(あぶらあげ)」から派生したなどと諸説あります。当初伝わった長崎天ぷらは、ポルトガル人が安土・桃山時代に長崎に伝えたもので、水を使わずに小麦粉、卵、酒、砂糖、塩を混ぜた厚いフリッター状の衣で揚げられていたようです。しかし油は大変な高級品だったため、一部の身分の高い人たちの口にしか入らない幻の料理だったことは想像できます。江戸時代に入ると油の生産量が増え、文献に初めて「てんぷら」の名称が登場したのが江戸中期1669年で、江戸天ぷらは薄い衣で、天つゆをつけて食べるスタイルのファストフードとして庶民に広まりました。その後、現在の天ぷらと思われる料理法は1748年に刊行された「歌仙の組糸」に記されています。それでも、昭和初期はまだ油は高価で、天ぷらは特別な料理とされていましたが、戦後になると経済が回復し、天ぷらは広く食卓に登場するようになりました。

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 さて、油でキッチンが汚れるし、サクッと思うように揚げられないという方が多いせいか、天ぷらは食べに行くか買うものになりはじめています。ですが、少ない油でも残り野菜、半端に残った肉や魚などを一気に一品料理にすることができますから、実はとても家庭的で便利なメニューの一つです。避けてばかりではもったいない!

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 天ぷらをサクッと揚げるには、まず、天ぷらの化学を理解し、失敗のリスクを減らすことからはじめてみませんか?高名な天ぷら職人さんが良くおっしゃる言葉に「天ぷらは蒸し料理です」があります。高温に熱した油に衣をまとった食材を入れると、まず、衣に水分が100℃で水蒸気に変わり瞬時に衣から蒸発します。次に、水の抜けた空洞に油が入り込み、でんぷん質が香ばしくカリッと固まります。この時、衣に包まれている食材は、高温の油に直接ふれることがないので、衣の中で蒸し焼き状態になり、みずみずしいまま火が通ります。ただし、揚げ過ぎると、内部の温度が上昇し、食材からも水分が出てしまい、食材の歯ごたえがなくなってしまうので、揚げ過ぎには注意が必要です。

 また、食材には、衣をつける前に「打ち粉」をふることも忘れずに!打ち粉は、衣の剝がれを防ぐだけではなく、食材から出た水分を吸い取って衣に移さない役割があります。さらに、衣の材料である小麦粉に、粘りの出にくい米粉や片栗粉を混ぜる、水分の蒸発を早め風味が増す日本酒を混ぜる(焦げやすいので注意が必要)などもカラッと仕上げるテクニック。油と衣の温度差が大きいほど、高い温度で長めに揚げることができるのでカラッと揚がるので、粉類や水は冷やしておくとカラッと揚がります。

 旬を閉じ込める天ぷら、是非とも揚げたてのおいしさをご家庭でお試しください!

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