2023年8月31日 「茄子」風味色々、世界をまたにかけるオールラウンダー

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 「残暑」から「初秋」にかけて一番の旬を迎える野菜...、それは「ナス・茄子」です。旬は6月から9月後半なので夏野菜としてお馴染みで、この時期のナスのとろりと濃い味わいは格別です。

 原産地はインドの東部で、そこからヨーロッパとアジア双方に運ばれ世界中に広まったと考えられています。特に地中海地域やアジア諸国、もちろん日本料理にも定番メニューを持つ野菜界No.1のオールラウンダーです。今回は、お馴染みの"ナス"について、改めて学んでみましょう。

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▲小茄子の含め煮

 日本にはインドから中国を経由して奈良時代の頃に伝わり、当時は高貴な人たちのみで食されていたようですが、江戸時代以降に広く栽培され庶民にもお馴染みの野菜となりました。ナスの英名は「eggplant」(エッグプラント)、直訳すれば「卵植物」。初めて見た英語圏の人が丸っこい見た目から名付けたと思われますが、世界的には(もちろん日本でも)大きさは大小様々、形も丸やふくよかな下膨れから細長いもの、また、いわゆる茄子紺や白、緑、縞模様など、カラーリングも多彩で一つの品種でこれほどにバラエティー豊かな見た目を持つ野菜はほかにありません。日本で広く流通しているのは長茄子と中長茄子という種類です。一方、丸茄子や水茄子に代表されるように、その土地に順応しながら各地に根を下ろしたものもあり、多様な特色のあるナスになりました。

 栄養面はつい最近までほぼ注目されることがなく、ほとんど栄養がない野菜の扱いでしたが、あの紫のきれいな色は、夏の強い日差しから身を守るアントシアニンの色で、強い抗酸化作用があることがわかってきました。明け方、ヘタの陰で光が当たらない部分は白い状態ですが、時間の経過とともに下に伸び、白い部分が太陽に当たるときれいな紫色に変化していきます。太陽光がしっかり当たった表面に抗酸化物質が形成され艶やかにピカピカになるわけですね。また夏の果菜類の特徴でもある豊富な水分も熱中症対策として重要です。

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▲皮をむいた茄子にアンチョビとニンニクをきかせてペーストに。

南仏の定番メニュー「貧乏人のキャビア」

 さて、美味しいナスを選ぶコツ、目利きのポイントは「ガク」です。肩が張っていてトゲがツンツンしているものを選びましょう。ヘタの切り口がみずみずしく緑色でハリのあるものは、収穫後に時間が経っていない証拠です。また、表皮にハリがありつやつやピカピカはもちろんですが、水分が主体なので、適度な重みがあることも重要です。

 また、洗い方にもコツがあります。ナスは切る直前に流水で洗うようにします。ガク部分のとげに気をつけながら、つるつるの表面は傷つきやすいため、指の腹でやさしくかつしっかり洗って表面の汚れを落とします。カットしてから洗うと、内側のスポンジ状の部分によごれが付着し染み込んでしまうため、必ず切る前に洗います。

  次にナスを切ってしばらく置くと切り口が黒ずんでくるのが気になりますね?これはナスに含まれるアク(ポリフェノール)の成分が空気に触れることで変色するからですが、最近は品種改良が進みアクが少なく、味に影響しないため水に浸すなどのアク抜きは不要です。しかし、あまりに黒くなるようであればえぐみとして感じることもあるため、切ったらすぐに15分ほど水にさらすなど時間にして処理します。アクは栄養成分でもあるため、抜き過ぎないように!が鉄則です。なお、焼きナスなど丸ごと調理の場合は内部が空気に触れないのでアク抜きの必要はありません。さらに、切り方としては、皮部分には味が入りにくいため、炒め物や煮物にする場合は、味をしみこみやすくするために、断面の多い乱切りにしたり、皮に切り込みを入れます。

 また、ナスは加熱すると紫色が退色して茶色になってしまうので、メニューによっては色止めが必要です。色止めには次のような方法があります。

①皮の部分に油を塗ってから加熱調理する

②皮を下にして油に入れ素揚げしておく、油通しをする

③煮物や漬物にはミョウバンを使用する

④皮目に包丁を入れて短時間で加熱調理する

⑤お湯に酢を入れてゆでる

⑥加熱後うちわなどであおいで熱を飛ばす

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▲トルコ料理の「茄子のジャジュク」

炒めた茄子と鶏肉に、きゅうりとヨーグルトを混ぜたソース(ジャジュク)をかけて。

 最後にナスの保存方法ですが、水分が多く冷気に弱いため、冷気に当たるとすぐにしなびてしまい、古くなると種も黒ずんでしまいます。夏野菜なので冬場は買わないことが一番ですが、冬に使う場合は室内の常温で、それ以外の季節は冷蔵庫の野菜室で保存します。水分保持のため1本ずつラップや新聞紙で包んでポリ袋に入れ、しっかりと口をとじてください。ナスは下へ伸びる野菜のため、収穫前と同様の向きにたてて保存すると、ナスのエネルギー消費がおさえられて長持ちしやすくなるといわれています。また、輪切りなど、あらかじめ料理に使う切り方に切って塩をふり、水気を拭いてフリーザーバックに入れて冷凍保存することも可能です。フリーザーバックに入れるときはできるだけ平らにし、アルミトレーなどにのせて急速冷凍させると良いでしょう。解凍すると水っぽくなってしまうため、解凍せずにそのまま調理に使います。

 トマトソースや生クリーム、豆板醤やナンプラー、鰹節や醤油にも難なくなじむナス、美しい色やフワフワねっとり食感を生かして、多彩なメニューを楽しんでください!


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