2024年3月19日 春はお外で!季節を味わう風流ごはんの楽しみ

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 春本番、梅が終わり桜前線のニュースが気になる季節ですね。もう少しすると梅や桜などの樹木花ばかりでなく、カーペットのように畑一面に広がる菜の花やレンゲも美しい風景を見せてくれます。色とりどりの花が咲き誇る春は、暖かい陽気に誘われテラスや戸外での食事が楽しい時期です。海外では花を楽しむ祭りやパレードが行われますが、特にお祭りというわけではなく、決まった形式もなく、桜の下で持ち寄りの料理を囲み、ただただワイワイと花を肴に飲み食べる花見宴会(hanami)は、ありそうでない日本独特の文化のようです。

 そこで今回は、なぜ?いつから日本人がお花見好きなのか?花見に込められた意味などを紐解きながら、春を演出する料理のちょっとしたコツなどをお話ししてみましょう。

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 花見の風習は、歴史的な背景と桜の花の儚い美しさが結びつき、今や日本文化の一つとして、インバウンドの皆さんにも広く愛されて始めています。そもそもの始まりは、奈良時代に始まる貴族行事が起源です。遣唐使により中国から伝来した珍しい"花=梅"を愛でることは貴族のステータスで「梅花の宴」と呼ばれる宴会を行っていたようです。しかし、奈良時代の花見は、梅の花の美しさを鑑賞するというより、梅の花には魔除けの力があると信じられていて、厄払いの儀式的な意味合いが強かったようです。

 その後、桜の花見が文献にはじめて登場するのは平安時代の『日本後記(にほんこうき)』という、朝廷が編纂した歴史書で、嵯峨(さが)天皇が812328日に神泉苑(しんせんえん・京都にある寺院)で、「花宴の節(かえんのせち)」を催した、と記されています。平安時代初頭までは、花見といえば梅だったのですが、嵯峨天皇が地主神社に植えられていた桜のそのあまりの美しさに魅了されて以来、毎年神社から桜を献上させ、梅ではなく桜の花見を催すようになったとのこと。やがて桜の花見は天皇主催の定例行事になり、皇族や貴族などの上流階級のあいだで定着。京都の東山などに桜が植えられ、現在にも続く花見の名所が誕生していきました。さらに、江戸時代には都市部に住む町民が増加し、庶民文化が豊かになると、花より団子、"酒盛り"としての花見が広がりを見せます。江戸時代初期には、上野に寛永寺が建立され、江戸の人々にとって随一の桜の名所となりました。この時期に植木屋の品種改良により観賞用品種が多く生み出され、ソメイヨシノが誕生し全国に広まりました。

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 ▲鯛のさくら蒸し

 梅から桜への変遷は和歌の世界で顕著です。『万葉集』には桜を詠んだ歌が43首、かたや梅を詠んだ歌が110首もあり、特に730113日に大伴旅人の邸宅で梅花を題材に32首の歌が詠まれた「梅花の宴」は『万葉集』巻五に収録され、これらは、日本の元号「令和」の選定元としても知られています。ところがその後、平安時代に編纂された『古今和歌集』では、桜を詠んだ歌が70首に対して、梅を詠んだ歌がたったの18首と、桜が梅に大逆転します。有名な「世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし」の歌をはじめ、桜の歌が多く残されていることからも、貴族たちがいかに桜好きで、桜の花は美しさの象徴!「花」といえば桜の花をあらわすようになったのかが分かります。

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▲ごちそうを持って外で食事するだけでも楽しい季節

 さて、料理において、季節を演出する手法は、①旬の食材を使う、②季節を連想させる香りをつける、③季節に合った彩りを入れるなどがあります。お花見に限らず、「春」を印象付ける食材としてはタケノコ、菜の花、アスパラガス、香りには桜のほかに、木の芽の香り、彩りでは桜のピンク、菜花の黄色、アスパラガスなどの新緑色があげられます。ピンクの食材はあまりありませんので、ここはやはり桜花の塩漬けを上手に配するか、ビーツや紅生姜などで白い食材に着色します。黄色は意外と菜花でも難しいので、卵の黄色が活躍します。炒り卵を散らしたり、卵焼きや錦糸卵をうまく配すると一気に春の気分が上がります。また緑色もホウレンソウやブロッコリーなどの濃い緑ではなく、菜花やアスパラガスなどの淡い緑色が鮮やかな印象になります。

 室内からお庭などを眺める感じでしたら、軽くつまむ一口鮨に日本酒はいかがでしょう?花見弁当の手作りはもちろん贅沢ですが、生ハムやチーズと手作りの総菜を組み合わせて、彩り良く箱に入れてもお手軽ですし、豪華にビーフカツサンドを作って公園ご飯も楽しいかもしれません。

 淡い桜色の世界でさわやかな春風を感じるお外ご飯、古人に思いをはせながら楽しんでみてはいかがでしょう?

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