2024年1月19日 バターはどれも同じ!?~あなたの知らないバターの世界~

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 大寒のころ、暖冬とは言え寒い日が続きますね。寒くなると、こってりしたものが食べたくなりますよね。体が冷えるとなぜこってりしたものが食べたくなるのか、考えたことありますか?さまざまな理由があるのですが、食の観点からも「体温」は味覚を左右する重要なファクターで、体温維持と味覚は直結していると言っても過言ではありません。

 味覚学では「おいしい」という反応を導く主たる物質は熱量素です。なぜなら、"生き物には体温が必須だから"です。

 三大栄養素といわれる「たんぱく質」「炭水化物」「脂質」の1gあたりのエネルギー(熱量)は、脂質が9kcal、炭水化物とたんぱく質はどちらも4kcalです。つまり、脂質が最も多くの熱量をもっているのです。

 生き物はエネルギーを摂らないと生きられないので、エネルギーを多くもつ食品を食べると「おいしい」スイッチが入ります。体温維持が必要な特に寒いとき、エネルギーが高そうなこってりとしたものが食べたくなる理由のひとつが分かりましたね。

 中でも、エネルギーだけでなく乳製品由来の風味(味と香り)を併せ持つことで、格別においしさを後押しする食品、それが「バター」です。そこで、今回は体温を保ちながら、独特の風味で様々な冬メニューに大活躍の「バター」のあれこれをご紹介しましょう。

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■「バター」とは

 バターは、牛乳から分離した油脂分=クリームを練って水分を抜きながら固めた食品です。植物性油脂に比べてコクがあり、濃厚で豊かな香りが特徴的です。乳脂肪分が80%以上、水分が17%以下の基準を満たしているものがバターとして認められ、100gあたりの栄養素は、エネルギーが717 kcal、炭水化物が0.06 g、脂質が81.1 g、飽和脂肪酸が51.4 g、一価不飽和脂肪酸が21.0 g、多価不飽和脂肪酸が3.0 gで、ビタミンやミネラルも含まれています。

 日本では乳製品メーカーが作った箱入りのものが一般的ですが、酪農が盛んな欧州では、各地に特産品としての地元ブランドがあり、地域ならではの個性豊かな風味を楽しむことができます。また、レストランやオーベルジュなどでは、しばしば自家製酵母のパンと合わせてホームメイドバターが提供され、独特の味わいでオリジナリティー溢れるバターを味わえます。

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▲欧州のクラフトバター

■「バター」の種類と使い分け

 発酵バター、無発酵バター、有塩バター、無塩(食塩不使用)バター、海藻入りやバニラやチリパウダー入りのフレーバーバターなど種類は豊富です。

 日本では無発酵バターが主流ですが、欧米では発酵バターの方が一般的です。日本で売られている発酵バターは、ほぼ輸入品のため高価です。発酵バターは手間と時間がかかり、強い風味が特徴です。

 塩分は焦げやすく、塩味の調整ができないので、お菓子やパン作り、料理には無塩バターが基本です。有塩バターはトーストやサンドイッチなど、バターをそのまま味わうメニューに向いています。

 また、バターは、温度が上がるとやわらかく形を変えやすい性質(可塑性)があるため、塗る、混ぜる、固めるなど、温度帯によって味や香り、混ざり方などの変化を考慮し、レシピごとの適温の見極めが重要です。

 植物性油脂には不飽和脂肪酸が多く含まれているため、加熱調理にはあまり向いていませんが、動物性油脂は炒め物や揚げ物などの加熱調理に向いています。特に120℃~160℃程度に加熱したバターはブールノアゼット(焦がしバター)と呼ばれ、ヘーゼルナッツに似た甘く香ばしい香りが特徴で、フィナンシェやマドレーヌなどの焼き菓子や、魚介のムニエル、ポアレ、ステーキの仕上げ、さらにパセリやレモンなどを加えてソースにするなど多くのメニューに使われます。また、野菜や肉魚などから煮出したエキスやワインなどを煮詰めて風味を凝縮した後、冷たい(凍っていてもOK)バターを少しずつ加えて手早く混ぜ、エキスとバターを乳化させたバターソースはフランス料理の基本です。

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▲クラフトバターの朝食

 最近では国産でも手作りのクラフトバターが手に入るようになってきましたし、フランス料理店などでは輸入の発酵バターをふんだんに使う店も増えてきました。海外にお出かけの際にはもちろん、国内でもレストランなどが工夫を凝らしたバターに注目してみてください。きっと新しい楽しみが増えますよ!

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