2024年11月20日 「おにぎり」と「おむすび」~違いを知っていますか?~
紅葉を楽しんだのもつかの間、気が付けば街にイルミネーションが点灯し、クリスマスケーキやお節の予約が始まり、何だか気ぜわしい季節になってきました。そんな中、豪華なお料理の話題とは裏腹に、忙しい日常ではついつい手軽なファストフードで済ませる回数が増えていませんか?ハンバーガーやサンドイッチは定番ですが、バリエーション豊かで老若男女全世代から愛される日本のファストフードの代表と言えば?何と言っても「おにぎり」ですね。そこで今回は、天孫降臨(日本建国の神話)の時代から日本人の主食であり、ソウルフードのお米(ご飯)について、改めて学んでみましょう。
そもそも、日本にお米が伝わったのは紀元前3000年から2000年頃とされていて、豊富な水と温暖な気候に恵まれたことで、稲作が主要作物として発展しました。飛鳥時代から奈良時代には、稲作技術はさらに進化し、水田耕作が広まり、稲作に関連する神事や儀式も行われるようになりました。中世に入るとお米は主食として確立し、貨幣と並び富や権力に関わる重要な産物となります。江戸時代には稲作技術はさらに発展して効率化が進み多くの新種が開発され、保存技術も進化して長期間保存が可能になりました。近代に入り農業機械の導入が進み、戦後、稲作の生産は大幅に増加しましたが、現在では食の欧米化に伴い消費は減少傾向にあります。
とはいえ、米食が日本人の食卓から消えることはなく、それはお米が単なる炭水化物の補給源としてではなく、日本人独特の自然に対する畏敬や感謝の思想と結びついているからで、実はそこに「おにぎり」と「おむすび」の違いの答えがあります。
「おにぎり」=握り飯(にぎりめし)は、農作業や戦場などに持参するために、ご飯を固形にしてみそなどを塗ったテイクアウト食です。持ち運びしやすければ形に決まりはありません。対して「おむすび」は、神社などで作物の豊作を祝う神事の際に、奉納されたお米を下げた後、供えた作物を調理し、神職と参列者でいただく宴会(直会)の席で、炊いたご飯を神の形を模して作った特別な食べ物です。"神とご縁をむすび、感謝の意を表し、神様と同じものを頂くこと(共食)で体を清め、より神様と一体になれる"と考えられていましたので、おむすび=お結びは、神とご縁を結ぶ神聖な食べ物ですから、神の形を模して三角形に形作りました。 えっ⁈神様って三角なの?
それは、古い神社は神々を祀る場所として、自然の美しさと神聖さを感じさせる場所、多くは山頂や山腹に建立されていて、日本の神話では"山は神々の住まい"とされ、やがて山全体を神として崇めるようになります。つまり、お米と山岳信仰が結び付き、直会でのご飯は神の形=山の形=三角形に形作るのが習わしとなりました!
このように、お米は日本の主食として、古くから人々の生活に欠かせない存在で、神事や祭りにおいて重要な役割を果たしてきました。例えば、11月23日に行われる「新嘗祭(にいなめさい)」は、天皇が新米を神々に捧げて共に食し、稔りに感謝する祭りですが、皇室においては催事ごとに様々なお米のメニューが供されます。中でもお正月や特別な祝席で供される「祝い飯」は、天照大御神(アマテラスオオミカミ)を模したデザインで目を引きますが、一般にはあまり知られていません。そこで、皇室で長く食されている、簡単超おいしい!祝い飯レシピを特別にお伝えしましょう。数百年(千年以上)前からの伝承ですから、設備的にも技術的にも難しいレシピは無理!素朴な食材を生かした簡単なレシピです。
まず、目出鯛=タイの上身(皮や骨のない刺身用ブロック)1枚と日本酒100~150㏄程度を焦げ付きにくいフライパンか鍋に入れ、中火にかけて加熱します。タイが白くなってきたら箸数本か木べらなどで崩し、弱火に落として焦がさないようにバラバラにほぐして、大きめの大豆粒程度のそぼろ状になったら、塩一つまみを振って混ぜ、バットなどに移して冷まします。次に卵2個に一つまみの塩を入れて混ぜ、薄焼き卵を焼いて千切りにし錦糸卵にします。小丼などに炊き立てのご飯を平らに盛り、鯛そぼろをたっぷりとまんべんなくのせ、その上に錦糸卵を広げ、最後に真ん中に紅生姜をトッピングしたら、天照大御神=太陽を模した「祝い飯」の完成です!
ちなみに、祝いのご飯として勘違いされているのが「お赤飯」ですが、赤いご飯はあくまでも「魔除け」で、大事な日に魔が入らないように願ったもので、祝儀の意味はありません。
今年の正月は、皆さんも皇室に倣い、「祝い飯」で新年を寿いでみませんか?
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