倍返し・・・やられたらやり返すの?
渋谷さん、ちょっとお伺いしていいかしら?
はい、何なりとどうぞ。
私、不動産のお勉強をしているんだけど、「倍返し」って出てきたのね。
「やられたら、やり返すみたいな・・・」ここのところがいまいちピンと来ないのよね。
それは「手付倍返し」のことですか?
そうそう、手付金のところよ。
それは、やられたらやり返すという話ではありませんので、ご説明させていただきます。
ありがとう。助かるわ。
不動産は高額商品ですから、売買代金の全額をポンと支払える人は少ないですよね。
一般的に、契約時に買主が手付金を支払って、一定期間後に残代金の精算と物件の引渡しを行うという方法がとられています。
民法では、手付金は解約手付と推定されるんです。
かいやくてつけ?
えーと・・・簡単に言うと、解約手付は、売主または買主の一方が契約を解除するために利用されるものと考えてください。
売買契約を解除するというのは、契約をなかったことにすること?
そうです。例えば、A物件を買おうと思って手付金を支払ったけど、翌日、やっぱり気が変わって契約を解除したいってケースです。そのようなときに、買主は支払った手付金をあきらめれば売買契約を解除できるのです。
契約を解除するのに期限とかあるの?
はい。買主側であれば、売主から物件の引渡しまたは鍵の引渡しなどを受ける前であれば、支払った手付金を放棄することで契約を解除できます。
売主側であれば、買主から売買代金の残額の支払いなどを受ける前であれば、手付金の倍額を支払うことで契約を解除できます。
なるほど。売主が物件を引渡したり、買主が残代金を支払うことを「契約の履行」というのよね?
そのとおりです。手付金による契約解除は、相手側が契約の履行に着手する<前>であることがポイントですよ。
でもさ、売主は契約を解除するために手付金を倍返しするんでしょ?
売主の方が損するみたいね。
いえいえ。買主も売主もどちらも契約を解除した場合の負担額は同じなんですよ。
例えば、1,000万円の物件の売買契約時に、買主が手付金として100万円を支払ったとしますね。売主が契約の履行に着手する前であれば、買主は支払った100万円を放棄することで契約を解除できます。
一方、売主側から見てみると、1,000万円の物件の売買契約時に、買主から手付金として100万円を受け取っていますね。買主が契約の履行に着手する前であれば、売主は200万円を支払うことで契約を解除できます。
その200万円は、買主から預かった100万円の返却と、契約を解除するために売主が負担する100万円ということ?
そのとおりです!売主による契約解除は『手付の倍返し』とあるので、売主側が一方的に損をするようにとらえがちですが、実際に売主が支出するのは100万円だけです。
買主も売主も契約を解除するための負担額は、どちらも100万円ということですね。
そういうことか。やっとスッキリしたわ。
昨日ママに貸した100円は倍返しにしてもらおうっと!
今回は不動産取引における『手付金』のお話でした。試験でもよく出題されていますのでポイントを整理しておきましょう。