相続後は何かと忙しい

おーい、ばあさん。喪服を用意しておいてくれ。

どなたが亡くなったんですか?

囲碁仲間のせんさんだよ。しばらく入院していたが、昨夜亡くなったそうだ。

またお仲間がひとり旅立ってしまって、さみしくなりますね。

そうだな。せんさんとは長い付き合いだったからなぁ...。
せんさんのご遺族はこれからが大変だ。悲しいと言っている間にも、相続の手続きを進めていかなくてはならないからね。

相続の手続きってそんなに大変なんですか?

通夜・葬儀の準備を進めながら、役所へ死亡届の提出、49日法要などの準備もあるだろ。その間にも遺言書の有無を確認し、相続財産の調査や戸籍謄本を取り寄せて相続人の確定をしなくてはならないんだよ。隠し子が見つかったりしてね...!?まあ、せんさんにはその心配はないがね。3ヵ月以内に、相続するか、相続放棄するかも決めなくてはならないし、忙しいんだよ。

それじゃあ、悲しんでいる暇なんてありませんね。

そうだね。さらに、10ヵ月以内に、相続税の申告と納付まで済ませなくてはならないんだ。相続財産が不動産だけだったりすると、分割が難しいから、相続人間でもめることも多いらしいよ。

せんさんは、遺言を用意していなかったのかしら?

せんさんは、わしが証人になって「公正証書遺言」を作ってあるから大丈夫だよ。

公正証書遺言?

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」というのがあってね、それぞれ作成方法が違うんだよ。
比較的簡単に作成できるのは「自筆証書遺言」なんだけど、全文を手書きで作成しなくてはならないんだ。相続財産の目録は署名押印してあればパソコンで作ったものでもOKだけどね。
自筆証書遺言は、自分で書くから、遺言書の内容を秘密にしておけるし、費用もかからない。だけど、遺言書の日付を「2019年12月吉日」なんて書くと無効になってしまうのさ。「吉日」では日にちが特定できないからね。それに保管が難しいっていう問題もあるね。

せんさんが準備した「公正証書遺言」はどうなんですか?

「公正証書遺言」は、遺言者が口述した遺言の内容を、公証人が筆記して、遺言者と証人2人以上が正確に記載されているかを確認し、署名押印して、公証役場で保管してもらう遺言書なんだよ。証人は遺言者と利害関係にある人はなれない。費用と手間がかかるけど、公証人は法定手続きにのっとって作成してくれるから、無効となるおそれがないのさ。

「秘密証書遺言」は?

「秘密証書遺言」は、パソコンで作成しても問題ないんだ。遺言書を封印してから、公証役場で遺言の存在を証明してもらうんだよ。遺言の内容を秘密にできるのはいいけど、証人2人以上が必要だし、公証人の証明にも費用がかかるね。それに公証人は遺言の内容を見ていないから、無効になるおそれもあるのさ。

じゃあ、安全で確実な遺言は「公正証書遺言」ですね。
おじいさんは、遺言書を作成してるんですか?

まあ、ぼちぼちね。

えっ!おじいちゃん、死んじゃうの?病気なの?

おいおい、おじいちゃんを病人にしないでくれよ。
おじいちゃんは、ゆうくんの花嫁さんを見るまでは死ねないよ。

遺言の方式や相続後の手続きについては、「相続・事業承継」に記載しています。
ちなみに、「自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」は、家庭裁判所で検認の手続きが必要ですよ。