2025年6月10日 日本料理だけじゃもったいない!ワサビの魅力
蒸し暑い日本の夏がやってきます。気温もさることながら湿度が高いと、皮膚表面からの水分蒸発が少なくなり、気化熱で体表の温度を下げることができません。このため体内に熱がこもりグッタリしてしまいます。唐辛子などの刺激的な辛みで強制的に発汗することもできますが、それだけでは胃が荒れてしまいます。
そこで注目なのが、発汗作用はないものの、さわやかな辛味と清しい香りで食欲をそそる、日本固有のハーブ、「山葵(ワサビ)」です。さわやかな風味だけでなく殺菌作用もあるため、日本の生魚文化には欠かせない存在です。
鼻にツーンとくる独特の辛味成分はアリルイソチオシアネート(Allyl isothiocyanate)。すり下ろすなどで細胞が破壊されると酵素の働きによって生成される化合物です。イソチオシアネート系の成分はカラシやダイコンにも含まれていますが、香りにおいてワサビがダントツです。また、ワサビの辛味は揮発性が高く時間とともに飛んでしまうため、すりたてが一番!刺身や鮨などの生魚にはもちろん、塩焼きの魚や塩味の焼きとり、塩で味付けして焼いただけの肉類に添えても、魚や肉に含まれるうま味成分と、ワサビのさわやかな辛味の相乗効果でメイン食材の味を引き立てます。
そんなワサビですから、和食に限らず洋食にも応用しない手はありません。生クリームやサワークリームにワサビを混ぜたワサビクリームソースは、ピリッとした後味が絶品で、白身魚はもちろん、ステーキやグリルチキンのソースに。バターとワサビを混ぜて、パンやグリルした野菜、肉や魚に添えたり塗ったり。特にサーモンや白身魚との相性は抜群です。パスタなら、ペペロンチーノやカルボナーラにワサビを少し加えると、独特の風味が加わって新鮮な味わいになります。オリーブオイル、レモン汁、ハチミツとワサビを混ぜると粋なドレッシングにもなります。さっぱりした風味で、魚介系のサラダやカルッパッチョのソースとして活躍します。
揮発性のワサビはすりたてが一番ですが、加熱が必要なメニューに加える場合は、ちょっとしたコツで風味を生かしながらバリエーションを広げることができますのでご紹介しておきましょう。
- 仕上げに加える: 加熱後の料理にワサビを混ぜることで、辛味と香りを最大限楽しめます。
- 生クリームやバターでコーティング: 乳脂肪分と混ぜることで風味がある程度保持されます。
- 低温調理との組み合わせ: 直接高温で加熱せず、温める程度にすると辛味が残りやすくなります。
フランスはニースにあるミシュラン一つ星店KEISUKE MATUSHIMAのスペシャリテは、さっと焼いた牛モモの薄切肉とたっぷりのワサビをミルフィーユ状に重ねたメニューで、それまでのフランス料理では考えられない組み合わせでした。当時のフランスでワサビの持つ風味は新鮮な驚きで、早々に星を獲得し話題になりました。その後、柚子などと共に日本のハーブに注目が集まるきっかけになり、以後のフランス料理や菓子の世界に多大な影響を与えたことはいうまでもありません。
いかがですか?蒸し暑い夏に日本独自のハーブ「ワサビ」で、少しでも快適に過ごしてみませんか?
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