2024年12月27日 今さら聞けないお餅のあれこれ

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 いよいよ年の瀬も押し迫ってきました。何かと慌ただしい中ですが、大晦日やお節の準備は万全ですか?近年は、お節は"買うもの"のイメージになってきましたが、メインのお重は買ったとしても、お雑煮だけは各家庭で手作りという方が多いのではないでしょうか?

 そこで今回は、日常の食生活が西洋化した現代でも、食文化の源流として別格の存在であるお餅について改めて学んでみましょう。

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 餅は奈良時代に中国から日本に伝わり、平安時代に貴族の間で贅沢品として人気が高まりました。儀式儀礼などでも使われたことから、家族の健康や繁栄を願う贅沢品として、奉納品のお下がりをもらった官僚や貴族の使用人から徐々に下々に渡り、室町時代に(1336年~1573年)入ると庶民の間でも広く食べられるようになります。特に正月や節句時に食され、江戸時代には地域ごとの特産品との組み合わせで種類も増え、さまざまな風味や形が生まれ、餅を使った料理や菓子類も多く発展しました。

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 中でも、お正月に神棚や仏壇に供えられる鏡餅は、あの丸い形には意味があり、古代の銅鏡に由来していると言われています。鏡や円形は太陽や月を象徴し、神聖な力を持つとされていたので、都人(みやこびと)は餅を丸く形作り、その力にあやかろうとしました。その後、貴族から武士が政権を握るようになると、神聖さよりも作業性が重視され、ついた餅はいったん平らに広げ、用途に応じて切り分ける手法になります。これが貴族文化を継承する関西以西が丸餅で、武家が中心の関東以北が角餅になった理由です。とは言え、今日でも鏡餅だけは新年の無病息災や家族の繁栄を祈り、年神様(歳神様)への供え物として全国的に丸餅が飾られますね。

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 このように、日本の伝統行事において、餅は神聖な食べ物として神仏に供えられ、そのお下がりが地域の特産品と結びつき、硬くなった餅を軟らかく食するご馳走としての雑煮や庶民も甘味を味わうようになると各種の餅菓子の普及へとつながっていきます。特に雑煮は地方色豊かで、各家庭に"我が家風"があるほどに日本人のソウルフードとなっています。そんな雑煮ですが、宮中でお正月に出される雑煮がどんなものかご存じですか?

 伝統と格式に則って数百年の歴史を超えて伝わった宮中雑煮は、天照大神の好物とされる伊勢の特産品である鮑がメインの「鮑雑煮」です。そのレシピは、現在のような機材器具がない時代から受け継がれたものですから、作り方としてはとてもシンプルで再現は簡単です。鮑のほかに、通常の倍以上の麴を使うことで貴族の食べ物とされていた白味噌、主役の丸餅の座布団代わりの輪切大根、神饌に使われる昆布と鰹節が材料です。

① 昆布出汁に日本酒適量を加え、洗った鮑(殻ごと)を入れて火にかけ、ひと煮立ちしたら弱火に落として7~8分、煮込む場合は弱火で1時間程度煮て、そのまま冷ます。

※中途半端な火入れをすると硬くなります。

② 大根は1~2㎝厚の輪切にして皮をむき、水または昆布出汁で柔らかく煮ておく。

③ ①の鮑を殻から外し、口を取り除いて、外した肝と共に煮汁に浸しておく。

※煮鮑は数日前に作って冷凍もOK

④ 大根と鮑(肝も)をそれぞれ軽く温め、大根の上に鮑を重ねて器に盛る。

⑤ 鮑の煮汁に、濃いめに白味噌を溶き入れて④に注ぐ。

※沸騰させない!

⑥ 仕上げに厚削りの鰹節をトッピングして完成。

  三が日を過ぎ、お餅が余った時のアレンジのコツも少しお伝えしておきましょうか。「お餅は和風」の概念を捨てて、"自由にカットできるショートパスタ"や、"早く煮えるイモ類"と考えるとアレンジは自在です。トマトソースの中にコロコロに切った餅を入れて温め、チーズを削ってオリーブオイルをかければニョッキのように食べることができますし、野菜や肉類などを煮た具たくさんスープに、一口サイズのお餅を入れれば、腹持ちの良いスープになります。ジャガイモよりも早く煮えて便利ですよ。食べやすく切ったお餅を揚げ、薄切り肉や季節の野菜を炒めたところに加えて甘酢あんを絡めれば、揚げ餅のサクサク感がアクセントの野菜炒めの甘酢あんかけの完成です。

 いかがですか?海苔で包んだ磯部やきな粉をまぶした安倍川だけでなく、お餅の文化的意義も味わいながら、色々なメニューでお餅を楽しんでみませんか?

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それでは、よいお年を!