2020.3月号 これで覚える階段の事故防止

2020.02.28

これで覚えるシリーズ2連続。今号は階段にまつわる内容を横断的にまとめます。何度も眺めて覚えていきましょう(3級のみ受験の方は、階段の形状、蹴込み板と蹴込み寸法、階段幅の算定、照度のあたりは読み流してください。2級の試験範囲です)。

【家庭内事故の状況】

家庭内事故の死亡者数は、高齢者に限ってみると、交通事故死の4倍以上です。そして高齢者の家庭内事故死の内訳をみると、階段の事故を含む「転倒・転落」は18.4%で、3番目に多い原因となっています。ちなみに、もっとも多いのは「溺死」(43.4%)、続いて「その他の不慮の窒息」(25.8%)です(厚生労働省「人口動態統計」2017年)。

【階段の形状】

階移動を行う階段は、高さや距離が大きくなる分、大事故につながらないように配慮された形状であることが重要です。

●直線階段
まず、シンプルな直線階段は、テンポよく昇降できる点ではよいのですが、万が一転落したときには階下まで一気に落下するおそれがあり、安全とはいえません。

直線階段.png

そこで途中、折り返しの形状になっていると、止まることができるので安全です。しかし、今度は折り返しの回り部分で方向転換しなければならないという問題が生じます。安全に方向転換できる形状からあげていくと、次のようになります。

●踊り場付き階段
もっとも安全なのは、方向転換できる踊り場のある踊り場付き階段です。踊り場を設けると、その分水平投影距離が長く必要になりますから、スペースの都合上、設置できないこともあります。

踊り場付き階段.png

●吹き寄せ階段
そこで、踊り場ほどではないものの、少し広めの段を設けて60度+30度+30度+60度にしたのが吹き寄せ階段です。60度の段のところで方向転換ができます。少し広めの段があることで安心感がありますね。

吹き寄せ階段.png

●従来の回り階段
最後に、上記のような広めの段がなく、ぐるりと方向転換しながら階段昇降するのが従来の回り階段(180度均等6ツ割)です。からだのバランスを崩しやすいうえ、内側の足は踏み外してしまいそうですね。水平投影距離は短く済みますが、安全面ではお勧めできない形状です。

従来の回り階段.png

【階段の寸法・勾配】

階段にはいくつも数字が出てくるので、まとめておきましょう。

蹴上げ230mm以下、踏面150mm以上
これは建築基準法施行令による規定です。建物としての最低限の基準であり、高齢者や障害者にとっては危険な寸法です。

勾配7/11
これは理想的とされている勾配です。ただし、一般的な住宅ではスペースの都合上、設置が難しく現実的ではありません。実用的な目安として、次の寸法が示されています。

勾配は6/7以下、かつ蹴上げ寸法の2倍と踏面寸法の和が550mm以上、650mm以下
これは「高齢者等配慮対策等級」の等級5、4で示されている基準です。勾配は緩やかであるほど安全ですから、6/7以下(7の距離で上る高さは6以下)となっています。あわせて、テンポよく昇降できる蹴上げと踏面の大きさの範囲を示したのが後半の寸法です。式にすると、次のとおりです(Rは蹴上げ、Tは踏面です)。

勾配:R/T≦6/7
寸法:550mm≦2R+T≦650mm

階段.png

蹴上げ110~160mm程度、踏面300~330mm程度
これは、アプローチの階段のところで出てくる目安の寸法です。上の3つは一般住宅の屋内階段についての数字でしたが、試験では、アプローチのほうがよく問われます。「たくさん覚えるのは無理!」という方は、この寸法をしっかりと覚えましょう。ご自身の足のサイズと比較して把握するのがオススメです。

【蹴込み板と蹴込み寸法】

蹴込みには必ず蹴込み板を設けます。蹴込み板がないと、見た目にもスカスカな不安感があり(それがオシャレでもあるのですが)、足先がいくらでも入り込んでしまいます。足が滑ったときを想像すると怖いですね。

蹴込み板と蹴込み寸法.png

そこで蹴込み板を設けるのですが、その設置位置も重要で、あまり深い位置だと(蹴込み寸法が大きいと)、やはり足先が引っかかってしまいます。等級5、4では、蹴込み寸法を30mm以下としています。上の図は左側が良い例、右側が悪い例です。

【階段の手すり】

階段の手すりは、廊下とほぼ同じです。ハンドレール(直径32~36mm)を段鼻から750~800mmの高さを目安に取り付けます。廊下と異なるのは、途切れるときの端部間の空き距離で、階段は400mm以内(廊下は900mm以内)とします。

建築基準法施行令では、手すりを両側または片側に設置することが義務づけられていますが、できれば両側に取り付けます。同時に階段幅も有効で750mm以上確保しなければならないので、階段幅が狭く、やむを得ず片側になるときは下りるときの利き手側に設置します。

ここで階段幅の算定の規定を思い出しましょう。壁からの突出が100mm以内の手すりは無いものとみなしてよいことになっています。つまり、100mm以内の手すりなら、設置しても算定幅は変わらないということです。100mmを超える場合には100mmを超えた部分だけ有効幅員から除かれます。この規定によって、階段幅の狭い住宅でも手すりの設置が可能となっています。

階段の算定幅.png

【その他の配慮点】

その他の配慮のポイントもまとめて確認しましょう。

●配置
寝室とトイレの間に階段の下り口がこないようにします。夜間にトイレに行こうとして転落するような事故を防ぐためです。

●ノンスリップ
踏面の段鼻部分には、転落防止のためにノンスリップを取り付けます。踏面から突出しているとつまずく危険があるので、薄型やシール状のものを使用するか、段鼻を切り欠いて納めます。

●色彩
蹴上げと踏面、踏面とノンスリップはそれぞれ見分けがつきやすいように色彩を変えます。コントラスト比が高い配色のほうが安全です。

●照度
階段や廊下のJISの推奨照度は50ルクスです。そのため、高齢者の利用を想定すると、50ルクス以上の照度が望ましいといえます。足元灯を併用するのも有効です。

以上、いかがでしたか?
階段は、転倒した際に大事故につながりやすいことや、昇降動作の負担が大きいことなどから、配慮点がたくさんあります。しかし、住宅の構造から離れて学習できるところですので、基礎や床束、根太などを覚えるのが辛い...という方は、階段を得意にしてくださいね。
感染症の拡大で心配事の多い日々ですが、時間がとれる限り、学習にも取り組んでいきましょう。覚えるには繰り返し。繰り返すには早めの着手です!(駒木)

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