2019.2月号 疾患に応じた整備の留意点③

2019.02.01公開

寒い日が続きますね。ユーキャン指導部では、インフルエンザや風邪が流行中です。皆さんの体調はいかがでしょうか?うがい・手洗いを励行する、睡眠と栄養をたっぷりとる、そしてからだを温める、ということを意識したい時期ですね。
そんな厳寒期に確認したい知識は、「ヒートショック」です。あわせて「疾患に応じた整備の留意点」の第三弾として、「心筋梗塞」についても取り上げます。

【交通事故死の4倍以上】

まず、家庭内事故の状況からご説明します。人口動態統計(2017年)によると、高齢者の家庭内事故による死亡数は年間12,683人でした。交通事故死が2,883人ですから、家庭内事故死が4倍以上ということになります(過去の統計では3倍以上の差でしたが、その差が開きました)。

近年、高齢ドライバーの交通事故が話題に取り上げられることが増えていますが、高齢者の死亡事故に関しては家庭内のほうが多く起こっているのです。そしてその事故の内容をみてみると、もっとも多いのが溺死(できし)です。窒息や転倒・転落などより多く、4割以上が溺死なのです。この話は、初めて聞く方は必ず驚きます。意外とも思えるこの現象の原因として考えられているのが、ヒートショックです。

【ヒートショックとは】

ヒートショックとは、急激な温度変化がからだに及ぼす影響のことです。特に血圧が急上昇・下降する影響が大きく、それが心筋梗塞や脳血管疾患を引き起こす原因になります。

たとえば、暖かい部屋を出て寒い脱衣室に行くと、血圧が急上昇します。適温の浴槽に入って温まると、今度はリラックスして血圧が下がります。さらに浴槽から一気に立ち上がると、血圧はもっと下がります。そして再び寒い脱衣室に出ると、血圧が急上昇する、という変動が起こります。

脱衣室.png

室温の影響で血圧が変動する理由は、からだのなかで熱移動をし、体温を一定に保とうとする働きがあるためです(詳細は2016.8月号参照)。寒さを感じると、からだの熱の放出を防ごうとして血管が収縮します。体表面に流れる血流量を減らせば熱が逃げにくくなるからです。このとき、血管が縮小し、血液が流れにくい状態となって、血圧が上がるのです。

そして、このような血圧の急変動の結果、心筋梗塞や脳血管疾患が生じ、意識を失ったのが浴槽内であった場合、そのまま溺死につながってしまいます。それでは、心筋梗塞については、整備の留意点も確認しておきましょう。

【心筋梗塞】

心筋梗塞は、虚血性心疾患の代表で、心臓に血液を送る冠動脈(冠状動脈)の内腔が狭くなり、血液が流れなくなって閉塞した先の細胞が壊死した状態をいいます。

心臓は、絶えず動いていますから、たくさんのエネルギーが必要です。全身に血液を送るポンプ役でありながら、同時に心臓自体も酸素を消費する臓器なのです。その供給を担う冠動脈が閉塞し、その先で血液が足りない状態になるのが虚血性心疾患です。

虚血性心疾患のうち、一過性に終わり、心筋の壊死にまで至らないものを狭心症といいます。疼痛発作があっても数分でおさまった、ニトログリセリンが効いた、という状態です。それに対して心筋梗塞は、完全に血流が途絶え、不可逆的なダメージが生じた状態です。症状は、胸や下顎の痛み、めまいや吐き気などです。

心筋梗塞を発症した方の住環境整備は、よく行われている段差解消や手すりの設置といった整備の、基本的な方法で対応できます。このとき意識すべきなのが、とにかく「心臓に負担をかけないこと」で、視点は大きく2つ、温度差をなくすことと、負担となる動作を避けることです。

先にお伝えしたヒートショックは、心臓に大きな負担となります。それを防ぐためには、室間の温度差をなくすことです。寒い時期の入浴の際は、事前に脱衣室や浴室を暖めておきましょう。できれば廊下も含めて、家中に温度差のない状態が最善です。

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そして、浴槽のお湯はぬるめにし、水位も低めにみぞおちまでとします。長湯も禁物です。洗髪動作は、両手を上げて行うため負担が大きく、大変なときは手伝ってもらう必要が生じます。

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そのほか、トイレも暖房し、楽な姿勢がとれる洋式便器を選択します。階段昇降は負担が大きいため、避けるようにするか、手すりを設置し、ゆっくりと昇降できるようにします。高い位置にある収納は、手の届きやすい位置に移動します。

ただし、安静にし過ぎても廃用症候群を招くため、運動を適度に行います。運動強度は、弱すぎても効果が出ず、強すぎても危険であるため、主治医によく確認して決めていきます。

そして再発防止の生活習慣を整えます。冠動脈が詰まってしまう要因には動脈硬化(血管の壁に脂肪が沈着して狭く硬くなること)があげられるため、その予防として、高血圧や高脂血症の改善をはかります。具体的には、青魚や野菜を摂り、飲酒や塩分は控えめにして、禁煙します。そして適度な運動を継続し、ストレスの少ない生活を送ることがよいとされています。

以上、いかがでしたか?
学習に時間をとられる日々では運動不足になりがちですが、ストレッチやウォーキングなどの軽い運動はこまめに取り入れたいところです。学習を通じてご自身や身近な方の健康に目を向けていってくださいね。寒い冬を元気に乗り切りましょう!(駒木)

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