2018.10月号 疾患に応じた整備の留意点②

2018.09.28公開

疾患に応じた整備の留意点②として、今号は認知症がある場合を取り上げます。認知症は、身体障害ではないため、住環境整備の要素が少ないと思われがちですが、環境整備のケアを含めると、それは多岐にわたります。むしろ、安全・安心・快適な環境整備の必要性は高いといえます。

特に火災の防止は、近隣も巻き込むため、重大なテーマです。以前、伺った先で目に染みる煙の臭いがあり、ご主人は「なんでもないよ」とおっしゃるのですが、奥から焦げた炊飯器が出てきたことがありました。どうやら認知症の奥さまが炊飯器をガスコンロに乗せて火をつけたようでした。

調理しようとするお気持ちは尊重したいところですが、このようなときは安全が優先です。ガスの元栓を閉める、電磁調理器に変更する、別の手段で食事を用意するなどして、火を使わないようにする必要があります。その分、調理は誰かと一緒にする機会をつくって、季節の食事などを楽しめるようにしたいですね。これからの季節は卓上の鍋パーティーなどいかがでしょうか。

それでは、そのほか「危険を防ぐ」、「排泄の失敗を防ぐ」、「徘徊への対応」、「居室その他」のポイントをお伝えします。

【危険を防ぐ】

火の不始末の防止としては、ガスの元栓を閉めておくほか、安全な暖房器具を使う、たばこは一人で吸わないようにするなどの対策もあげられます。そのほか、薬や洗剤、刃物など事故を招くものは目につかないところに保管し、冷蔵庫は常に確認して期限切れのものを処分します。

また、判断力や注意力の低下があるため転倒防止も重要で、適度な明るさを確保し、各所に手すりを設置します。床に物を置かないようにし、マットも滑りやすいものは避けるか滑り止めテープで固定するなどします。

【排泄の失敗を防ぐ】

排泄は、プライバシーや自尊心の面でも、衛生や介護負担の面でも重要な課題です。

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排泄の失敗を防ぐには、時間ごとにトイレ誘導するほか、トイレ以外のところで放尿する場合は、トイレがわりの容器を置く、放尿を思いとどまるような仕掛けを考える、トイレの場所をわかりやすくするなどします。「お手洗い」「便所」のほか、「厠(かわや)」「御不浄(ごふじょう)」など、本人にとってわかりやすい表示にするとよいでしょう。

私の知る特別養護老人ホームでは、死角になる廊下の角に、鳥居の形をした赤いカラーテープが張ってあります。そこは以前、放尿が相次いでいたそうなのですが、これを張って以来、ピタリとなくなったそうです。ちょっとした工夫ですが、効果の高いアイディアですね。

そして、不潔行為と呼ばれることでも、自分なりに片づけようとした結果のこともあります。トイレットペーパーを詰まらせるときには「落とし紙」に変更したり、自動洗浄の便器や、掃除しやすい床材を導入したりして対応します。

【徘徊への対応】

徘徊は、本人にとっては意味のある行動です。ですから、気の済むように行動するか、理由を探り解決するケアによって丁寧にかかわることが大切です。ただ、常に付き添っていられない実情もありますね。そこで、日常的には環境整備や体制づくりも重要となってきます。

玄関には外出を思いとどまるような文面の張り紙をしたり、センサーで知らせてくれる認知症老人徘徊感知機器を使用したりします。夜間などやむを得ない場合は二重ロックをかけるなどして施錠します。また対応としては、散歩や買い物に出かけて満足してもらったり、お茶やお菓子に誘ったりします。

万一に備えては、顔見知りの近隣の人に協力をあおぎ、見守りの体制ができていることが最善です。名前や連絡先を書いたものを身につけておくだけでも、いざというときに役立ちます。

【居室その他】

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部屋は適度な明るさを確保し、壁や床などはコントラストをつけて、認識しやすくします。錯覚を起こさないように壁や床は無地にして、テレビ番組は暴力シーンなど怖がるものを避けます。鏡も、写った自分の姿に戸惑うようなときは、目隠しをします。

大きな文字の日めくりカレンダーや季節の花などを飾ると見当識へのよい刺激になります。また思い出の写真や馴染みのもので囲まれると昔を思い出し、居心地のよい空間になります。そのほか、ペットは癒しの存在になりますが、最近はロボット技術も進んできているので、飼育が難しければおしゃべりできるロボットもいいですね。

急激な変化は混乱を招くおそれがあるため、荷物の片づけや模様替えをする際には、一気に捨てたりせず、少しずつ片づけるようにしましょう。

以上、いかがでしたか?
本人にとっての安全・安心・快適な環境は、同時に介護負担の軽減にもつながります。必ずしも大がかりな住宅改修を必要とせず、ちょっとした工夫で効果が出ることもたくさんあります。もちろん個人差はありますが、このような知識を備えて、アドバイスするときに役立ててくださいね。

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それでは、次号は増刊号として、出題予想をお届けします。未着手の内容が残っている方は早めに終わらせましょう!(駒木)

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