2017.2月号 高齢者向け住宅に詳しくなる!

2017.02.01公開

引っ越しシーズンが到来しました。これから4月にかけて、新生活の準備をする方が多い季節ですね。そこで今号は、住み替え・入所先となる高齢者向けの住宅・施設を取り上げてみます。

現在、高齢者向けの住宅や施設はたくさんありますね。どれも似たり寄ったりで「違いがわかりません」というご質問をよくいただきます。確かに、現在の住宅施策は煩雑ですが、これでも、少し前よりはすっきりしたんですよ。サービス付き高齢者向け住宅が始まる前は、高齢者円滑入居賃貸住宅、高齢者専用賃貸住宅、高齢者向け優良賃貸住宅なるものまであり、講師も息切れしていました。

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【数ある住宅・施設を学ぶ前に】

それでは、住宅・施設を一つずつ見る前に、「老人福祉法」と「介護保険法」の違いをはっきりさせておきましょう。この2つの法律の土台を知れば、介護施設の知識を上乗せしていくのは簡単です。

●老人福祉法は、1963(昭和38)年に制定・施行されました。戦後日本の復興のなか、福祉六法体制を築いた法律の一つです。この老人福祉法によって、4つの老人ホームが規定されました。特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホームです。

このうち、有料老人ホームだけは別物です。ほかの3つは、社会福祉法人等の限られた団体が、先に許認可を受けて開設します。一方、有料老人ホームは、誰でも、要件を満たしたら該当し、届出の義務が発生する、というものです。民間事業者を取り締まるための項目、と考えたほうがわかりやすいかもしれません。

●介護保険法は、2000(平成12)年に施行されました。介護を社会保険の制度で支え合うことを規定しています。歴史はまだ浅い...はずが、「生まれた時からありましたけど」という受講生が現れ始め...。いずれにしても、介護保険法のほうが老人福祉法よりも"後"であることがポイントです。

介護保険にはさまざまなサービスがあり、独自の名称が付けられています。例えば、老人福祉法上の特別養護老人ホームは、介護保険法上の施設として介護老人福祉施設と呼ばれます。このように、介護保険法上の取り扱いとしては別の呼び方をするので、1つの施設に2つの顔がある、という状態が生じています。

(ちなみに、厳密にいうと特別養護老人ホームと介護老人福祉施設は同じではありません。特別養護老人ホームは、もともと措置施設です。介護老人福祉施設はあくまで介護保険適用の施設のことであり、介護保険の基準どおりにならない例外的な場合には措置施設として特別養護老人ホームが機能します。だから、1つの施設に2つの顔、という状態なのです)

【13種類の住宅・施設】

さて、これから高齢者向けの住宅や施設を13種類ご説明します。13種類といっても、3つのカテゴリーに分類すれば整理しやすくなりますよ。

(1)入居しやすい賃貸住宅
(2)何らかのサポートを行う住宅など
(3)介護を行う施設など

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(上の図の「介護の有無」は、その住宅・施設が介護を提供するかしないかという点で記号化しています。したがって、×のところに住んでいる人は介護が受けられないというわけではなく、介護保険の居宅サービスなどが別途利用できます。△は住宅・施設によって×と○のどちらの場合もあるという意味です)

(1)入居しやすい賃貸住宅
①~③は、公的賃貸住宅です。高齢者向けの住宅というわけではありませんが、それぞれ、高齢者や障害者向けの施策として、バリアフリー化や入居の優遇などを行っています。

①公営住宅
地方公共団体が供給する賃貸住宅(県営住宅や市営住宅などのこと)です。低額な家賃で入居できる住宅の確保を目的としています。高齢者向けの施策としては、バリアフリー化や、入居収入基準の緩和、優先入居などの優遇を行っています。

②公社賃貸住宅
地方住宅供給公社が供給する賃貸住宅です(JKKと略しますがURほど浸透していない?)。住宅不足を解消し、勤労者により良い居住環境を供給することを目的としています。高齢化対応仕様を標準化するなど、高齢者向けのバリアフリー化を進めています。

③UR賃貸住宅
独立行政法人都市再生機構(UR)が供給する賃貸住宅です。良質な住宅を供給することを目的としています。高齢者向けには、バリアフリー化や、入居収入基準の緩和などの優遇を行っています。

(2)何らかのサポートを行う住宅など
皆さんを悩ませるのがこのタイプですね。④シルバーハウジングを除いては、上の表でも「介護の有無」が△で、介護付きの場合とそうでない場合があるという状況です。介護付きの場合には、介護保険法上では「特定施設入居者生活介護」としてサービスを提供します。

④シルバーハウジング
シルバーハウジング・プロジェクトによって、福祉行政と住宅行政が連携して運営する公的賃貸住宅です。生活援助員(LSA)が常駐し、安否確認や日常生活上の相談・指導、緊急時の対応や一時的な家事援助などを行います。

⑤サービス付き高齢者向け住宅
高齢者住まい法(高齢者の居住の安定確保に関する法律)による登録制度で、ハード面、ソフト面、契約面での基準を満たし、登録された住宅です。高齢者が入居しやすい賃貸住宅を増やし、またそのような住宅を探しやすくすることを目的としています。ソフト面の基準は状況把握(安否確認)と生活相談のサービスだけなのですが、実態としては、サービスを増やし、介護付きにしている住宅が急増しています。

さて、ここで老人福祉法のところでご説明した有料老人ホームのことを思い出してください。要件を満たすと有料老人ホームに該当する、という規定は、サービスを増やしたサービス付き高齢者向け住宅にも当てはまります(ただし届出義務については免除されます)。

そして有料老人ホームに該当するうえ、介護付きの場合は、介護保険法の指定を受けると特定施設入居者生活介護になります。つまり、1つの賃貸住宅が、サービス付き高齢者向け住宅になり、有料老人ホームにもなって、特定施設入居者生活介護にもなる、ということです。3つの顔。ややこしいですね。「納得がいかない!」とのお声も多いのですが、規定している法律が違うのでお許しください...。

●サービス付き高齢者向け住宅 ←高齢者住まい法
●有料老人ホーム ←老人福祉法
●特定施設入居者生活介護 ←介護保険法

⑥有料老人ホーム
高齢者を1人でも入居させ、食事の提供、介護、家事、健康管理のいずれかを行うものは有料老人ホームに該当します(これが、先述した要件です)。そして、「介護付(一般型特定施設入居者生活介護)」、「介護付(外部サービス利用型特定施設入居者生活介護)」、「住宅型」、「健康型」の4つに類型化されています。このうちの「介護付」の2タイプが、介護保険法では特定施設入居者生活介護としてサービスを提供します。

ちなみに、一般型特定施設入居者生活介護は、施設内部で介護を提供するもので、外部サービス利用型特定施設入居者生活介護は、提携先の外部事業者が入って介護を提供するものです。

⑦軽費老人ホーム(ケアハウス)
老人福祉法に規定する老人福祉施設の一種です。軽費老人ホームには、A型、B型といった種類もあるのですが、現在はケアハウスに一元化が進められています。自炊ができない程度の身体機能の低下や、在宅生活に不安があるなどの要件を満たす60歳以上の高齢者が入所します。

ここで、またまた老人福祉法を思い出してください。軽費老人ホームも、次の⑧養護老人ホームも、老人福祉法上の老人ホームでしたね。そして、特別養護老人ホームも仲間でした。これらの対象者の棲み分けを考えてみると、介護が必要な高齢者は特別養護老人ホームの対象です。つまり、軽費老人ホームと養護老人ホームは、もともと介護施設(中重度者向け)ではないのです。それでもやはり介護が必要になることがあり、その場合には特定施設入居者生活介護としてサービスを提供します。

⑧養護老人ホーム
老人福祉法に規定する老人福祉施設の一種です。環境的・経済的な事情などがあり、在宅生活が困難な65歳以上の高齢者が入所します。上記のとおり、介護を提供する場合は、特定施設入居者生活介護として行います。

(3)介護を行う施設など
ここからは介護が中心なので、介護保険法上の名称を先に立てます。地域密着型サービスが2つ、施設サービスが3つです。⑪~⑬の施設サービス3つを合わせて、介護保険3施設と呼びます。

⑨認知症対応型共同生活介護
認知症高齢者グループホームを制度化したもので、地域密着型サービスに含まれます。要支援2以上の認知症高齢者が対象です(要支援2の場合は介護予防認知症対応型共同生活介護)。5~9人の定員を1ユニットとし、小規模で家庭的な雰囲気のなかで介護などを行います。

⑩地域密着型介護老人福祉施設
定員30名未満の小規模な特別養護老人ホームのことで、地域密着型サービスに含まれます。2014年改正により、新規入所者は要介護3以上の人に限定されました(例外あり)。

⑪介護老人福祉施設
定員30名以上の特別養護老人ホームです。地域密着型介護老人福祉施設と同様、新規入所者は要介護3以上の人に限定されました(例外あり)。低額で、重度になっても介護が受けられるため、待機者が数十万人という規模でしたが、入所要件の厳格化や一部の利用者負担増(1割→2割)などを受け、待機者は減少しています。

⑫介護老人保健施設
病院と在宅をつなぐリハビリテーション施設です。例えば、病院で治療や急性期・回復期リハビリテーションを終えた後、介護老人保健施設で維持期リハビリテーションを行い、在宅復帰する、というような流れです。ただし、実態としては、在宅から介護老人保健施設に入所することも多く、在宅復帰というよりも在宅支援の役割が色濃くなっています。

ちなみに、介護老人福祉施設と介護老人保健施設の違いは、「福祉か医療か」という点です。介護老人福祉施設は社会福祉法人等が運営する福祉施設であるのに対し、介護老人保健施設は、病院や診療所と並ぶ医療機関です。

⑬介護療養型医療施設
病院に入院して提供される療養管理のサービスです。介護保険が適用になる高齢者病棟、とイメージするとわかりやすいでしょう。ただし、かなり前から廃止される方向で議論されており、新規の開設は中止になりました。
(2018.4追記:介護療養型医療施設の完全廃止はさらに延期されていますが、転換先として介護医療院が創設されました)

いかがでしたか?言葉が見慣れないうちは、脳が拒絶反応を示すかもしれません。でも、めげないでくださいね。何度か眺めるうちに、耐性ができるはずです(笑)。ちなみに私は、介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員の受験対策もやっていて、10年目になりますが、「もともと住宅施策が得意」というお声を一度も聞いたことがありません。ですから、安心して(?)、肩の力を抜いて学習してくださいね。(駒木)

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