2016.12月号 2016年の振り返りと1級の必勝法

2016.12.01公開

恒例のユーキャン新語・流行語大賞が発表になりました。今年の大賞は「神ってる」でした!

さて今号は、今年の試験も終わったところで、2016年の振り返りを口実に、書きたいことを書いてみます。タブーを破りつつ、皆さんに本当に知ってもらいたいことを2つ。大災害を振り返ってみえた、防災と福祉住環境整備の矛盾、そして1級試験について。

【大災害を振り返る】

今年も大地震や台風など、災害の多い年でした。被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。住宅のなかで犠牲になった方のニュースを聞くたびに、やはりバリアフリーだけでは安全・安心とはいえないな、と考えさせられました。

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日本は地理的条件から、災害大国といわれます。それでも、1959(昭和34)年の伊勢湾台風の後は、1995(平成7)年の阪神・淡路大震災まで、犠牲者数が1,000人を超える大災害は起こりませんでした。この大災害がなかった間(なかったからこそ?)、日本は高度経済成長の後期を迎え、その後も多くの建築物やインフラが整備されました。それらが老朽化してきているのが現在です。

【防災と福祉住環境整備の矛盾】

ここで矛盾の話です。福祉住環境整備では、階移動が困難な場合や階段での転落事故防止のためには、ワンフロア、特に1階で過ごすことを推奨しています。バリアフリーの階といえば、やはり1階ですよね。公的賃貸住宅でバリアフリー整備している住居の多くは1階です。認知症高齢者グループホームなどでも、昔ながらの平屋造りにしているところがあります。移動の都合や馴染みの景色という観点からは、1階での居住が便利でかつ安全・安心です。

しかし、大地震によって倒壊した木造住宅をみると、その多くは1階が圧壊しています。2階以上は原形をとどめながら、1階のみが潰れて無くなったような状態になるのです。また浸水や津波、土砂崩れも、最初に1階を襲います。そう、1階は最も危険な場所なのです。防災の観点からは、2階以上に寝室を置くことが推奨されています。

もし1階に寝室を置くなら、耐震補強と早めの避難といった対策が必須です。特に災害時要配慮者には、近くに避難支援者が複数必要です。しかし、近隣との付き合いは希薄になり、また施設や居住系サービスは小規模化して少人数の介護職で現場を担うなど、安全から遠のく矛盾を抱えています。

都心の木密地域(木造住宅密集地帯)、活断層や河川の近くは危険だといわれても、すでにたくさんの住宅や施設が建てられ、多くの人が生活しています。被害を忘れず教訓にして、災害時にも平常時にも矛盾しない「バリアフリー×防災」を実現しなければなりません。

災害時の備蓄品が人気のようですが、それは生き延びてこそ使えるものです。優先順位の第一は、命を守ること。あなたとあなたの大切な人の命が守られる環境を第一に考えてくださいね。乾パンより耐震、飲料水より避難路です!今後も折を見て情報発信していきます。

【念願の1級受験】

続いて1級試験について。2級合格見込みの方は、ちょうどお考えになっていることでしょう。ただ、この1級試験については、ユーキャンでタブーな話題です。1級対策講座のご用意がないため、ご質問をいただいても、原則としてお答えできない内容なのです。そこで今回、受験経験者としての個人的見解をお伝えすることにします。

1級の受験は、私も何年もの間、二の足を踏みました。5%前後の合格率、記述式問題は採点基準が謎。手の出しようがない...。さらにユーキャンの講師になってから、解答速報を行うため、同日に開催の1級は受験しに行けなくなりました。ところがある年から、未取得の講師は、交代で業務を抜けて受験しに行こう!という話になり、一発合格必須のプレッシャーのなか、2012年に順番が回ってきました。

【1級試験の内容】

その試験について、まず合格基準は、午前と午後、それぞれ100点中70点以上をとることです。午前の前半試験はマークシート、午後の後半試験は記述式です。

出題されるのは、基本的には公式テキストの範囲です。そして、前半試験はほぼテキスト通りの文章で問われるため、何度か読み込んでおけば解けない問題はありません。問題形式も、2級・3級と同じ、択一問題や空欄穴埋め問題です。2級よりも範囲は狭いので、ここは嫌がらずに、素直にテキストを読みましょう。読み込み具合は、特に空欄穴埋め問題の出来に直結します。

さて、問題なのは記述式の後半試験です。合格率を下げているのはこちら。私が受験した2012年の問題は、次のような4問でした。
(字数指定がなく、一行程度で簡潔に記述するものを「一文記述」、字数指定があるものを「論述」としています)

●10-1 基本計画案(平面図)から読み取れる問題点の指摘(一文記述)
●10-2 ①階段とスロープの改修計画(部分的な作図)、②階段を計画した理由(一文記述)
●10-3 ①アセスメントの視点(一文記述)、②住宅改修と福祉用具での対応策とその目的(一文記述)
●10-4 ①孤独死や孤立死の問題(200字論述)、②日常生活自立支援事業の援助内容(一文記述)

それでは、図面が絡む10-1と10-2について、少し解説します。

10-1は、基本計画案(平面図)で示された新築の福祉施設について、次の4つの視点に基づいた問題点を指摘するものでした(一部改変)。

・介護保険制度における通所介護の設備基準上の問題点
・配食サービスの機能を果たす上での問題点
・地域交流などの機能を果たす上での問題点
・通所介護の利用者の立場からの問題点

これは私にとってラッキー問題でした。以前、配食サービスや通所介護を併設する福祉施設で働いていたからです。あの頃、一番好きな業務は、配食弁当の検食だったな(笑)、そんな懐かしさに浸りつつ、問題点を洗い出し。

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コツとしては、大きなところから見ることです。この問題の場合は、まず通所介護に必要な面積や設備を見ます。続いて玄関・厨房・通所介護のスペース・トイレなどの位置関係を見つつ、同時に配食の配達員や地域住民、通所介護利用者の動線をイメージします。最後に細かいところ、建具や開口部の幅員、スロープの勾配などが適切かどうかを確認します。

問題点が見えてきたら、あとは簡潔な文章にまとめるだけです。採点方法は不明ですが、確実にいえることは、キーワード・要素が書かれていれば得点できること。例えば「静養室がないため、設備基準を満たさない」「厨房や食堂に直接出入りできないため、配食弁当の受け渡しがしにくい」「通所介護のスペースを通らないと出入りできないため、地域住民が入りにくい」「トイレの建具がすべて開き戸で、通所介護の利用者にとって使いにくい」といった具合です。

もう一点、皆さん気になったかと思いますが、「介護保険制度の設備基準上~」って、基準を知らないと答えられないのでは?...はい、その通りです。1級試験では、介護保険制度上の基準やバリアフリー法と関連するガイドラインの詳細が出てきます。次の10-2も同様です。

10-2の①階段とスロープの改修計画は、平面図に直接描き込む作図の問題です。そしてこの階段とスロープは、「バリアフリー法の建築物移動等円滑化基準を満たすもの」という条件付き。加えて、スロープ部分の勾配と、手すりを設置した上で手すりの高さについても記入しなさい、という指示付きでした。

まずは平面図から高低差を読み取り、基準に適合する範囲で階段の寸法や段数、スロープの寸法を計算して描き込みました。しかし、作図といっても、定規の持ち込みは許されていません。そう、フリーハンドで描くのです。私は受験票(ハガキ)を定規の代わりにしました(笑)。

いやいや、恐れる(笑う)ことなかれ。小さな図面にフリーハンドで描くのが難しいことなら、採点するのも難しいことです。おおむね寸法が基準内かどうかを、細めた目で見ているだけと思われます。建築関係の方にはかえってフラストレーションかもしれませんが、精密さは求められていないのです。

その後の2013年(第31回)~2015年(第35回)の試験もほぼ同様の傾向です。パターン化すると、
①図面から問題点等を見つけて指摘する一文記述
②部分的な作図(平面図または展開図)
③知識が問われる一文記述
④その他200~300字程度の論述
この4パターンです。④の論述については、2013年の試験から増加傾向で、相談に対する回答を作文するものが出題されるようになっています。

【1級試験の必勝法】

最近では、2級試験でも図面の読み取り問題が出ますよね。また、高齢者や障害者に使いやすい住環境の配慮点は、2級で学習済みです。それに加えて、1級テキストに出てくる各種基準を押さえれば、後半試験にもじゅうぶんに対応できます。ちなみに、各種基準は、前半試験でもよく出題されるので、後半のみの対策というわけではありませんよ。

総じていえるのは、
(1)前半試験と後半の知識問題対策として、テキストを読み込む(これがベース)
(2)1級・2級テキストの図面と過去問題を使って、問題点の指摘や作図を演習しておく
(3)論点を簡潔に記述する演習をしておく
この3つの対策が効果的です。これで合格間違いナシでしょう。

特に私は、自分にとって不慣れであると感じた、(2)図面を使った演習を繰り返しておきました。その結果、記述式96点で無事合格。結果を見たら、恐れすぎていたな、と力が抜けましたよ。ただ、この結果は、日頃から2級試験対策で2級の内容に触れていることが大きく影響していると思います。特に建築の内容は1級対策に必須です。皆さん、2級テキストを捨てないで!おさらいしてくださいね。

いかがでしたか?もし私と同じように受験をためらっているなら、ぜひチャレンジしていただきたいです。そして、このノウハウを提供したいと思い、模擬試験だけでも実施したい!と騒ぎ続けて早数年...。なかなか実現せず、皆さんのお手伝いができず、本当に申し訳ありません。くじけずに、野望は持ち続けます。頑張ります。応援してください!

余談だらけの今号を最後までお読みくださり、ありがとうございました。来年からも指導部だよりは、福祉と住環境、検定試験にまつわる情報を発信し続けます。また覘きに来てくださいね。

それでは、来る2017年が、皆さんにとってよい一年になりますように。(駒木)

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