2016.10月号 車いす使用に必要なスペース

2016.09.30公開

全国で台風や大雨が猛威をふるっています。今年は本当に雨の多い年ですね。被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。今号はご要望にお応えして、Web上でも学習できるように、建築寸法のミニ講義<第2弾>車いす使用に必要なスペースをまとめて解説します。

【段差は5mm単位、スペースは100mm単位】

まず、前号で寸法のとらえ方をお伝えしましたが、学習のコツをもう1点。それは、スペースを考えるとき、数ミリ単位を気にしてはならないということです。段差の場合は5mmを超えるとつまずく危険があり、10mm単位で危険度が加速度的に増していきます。しかしスペースの場合は、5mm変わっても気づく人はいないでしょう。「あれ?この部屋、5mm狭くなってる」なんてことはありませんよね。そこで学習の際にも、段差の感覚とは切り替えて、50~100mm程度の単位で把握していくことが肝要なのです。

【直進のためのスペース】

それでは、車いすの基本的な動きからみていきましょう。車いすの動きには大きく、直進する動きと、方向転換する動きの2通りあります。直進の際には、車いすの全幅に若干の余裕を加えた幅員を確保します。介助用車いすの全幅が530~570mm程度、自走用車いすの全幅が620~630mm程度なので、大きいほうの自走用を目安にすると、ハンドリムを操作するためのゆとり100~150mmを加えて780mm程度です。

廊下の幅員.png

以下も自走用車いすの場合を中心にご説明します。検定試験でも自走用車いす中心に出題されます。

【方向転換のためのスペース】

方向転換に要するスペースは、実際には操作能力にかなり依存します。とても上手に操作する人はわずかなスペースでもクルッと回転できますし、そうでない人には広いスペースが必要です。

この検定試験では、360度回転する場合1,500mm×1,500mm、直角に曲がる場合の幅員850~900mmを目安としていますので、この寸法を覚えましょう。特に1,500mm×1,500mmは、ほかのスペースでも共通する基本の寸法です。

回転スペース.png

【アプローチの段差解消】

続いて場所別の寸法もみていきましょう。アプローチでは、やはり段差解消のためのスロープの設置が最重要です。スロープは、1/12~1/15勾配にすることを基本とします。

スロープの水平距離の計算は、「高低差×12」です。試験に出るのは1/12勾配の緩やかさになっているかどうかの判断ばかり。なので、計算が苦手という方もこれだけは覚えてください。「高低差×12」!これだけ。

スロープ.png

上の図の場合は、敷地と玄関ポーチの高低差が200mmなので、1/12勾配のスロープの水平距離は2,400mmですね(200×12=2,400)。加えて、スロープの上下に平坦部を設けます。平坦部は方向転換が可能な寸法1,500mm×1,500mmが必要です。スロープの上(玄関側)には玄関ポーチがあるため、あとは下(敷地側)に平坦部が確保できていれば安全に昇降可能なスロープといえます。

【玄関のスペース】

玄関では、①屋内用・屋外用の車いすを乗り換える場合と、②車いすを乗り換えない場合の2通りが考えられます。といっても、車いすを乗り換える場合のほうがスペースを要しますから、①を基本として覚えればよいでしょう。

まず玄関ホールは、車いすが方向転換することを考慮して...そう、1,500mm×1,500mmが必要ですね。これに介助者のスペースを加えた、有効寸法で間口1,650mm×奥行き1,500mmが目安です。なお②車いすを乗り換えない場合は、玄関ホールの奥行きは最低限(車いすの全長1,100mmに100mmのゆとりを加えて)1,200mmで足ります。

玄関のスペース.png

また玄関土間は、①②いずれの場合も間口にゆとりがあれば、奥行きは最低限の1,200mmでも大丈夫。玄関のポイントは、"玄関ホールの回転スペースと、間口に6尺以上のゆとり"です。

【廊下に面した部屋への出入り】

廊下に面した部屋に出入りする場合の開口部の幅員、ここだけ介助用車いすと自走用車いすの違いを理解しておきましょう。介助用車いすの場合は750mm以上、自走用車いすの場合はそれより広い開口が必要です。さてここで要注意。2級試験と3級試験で若干表現が異なります。2級試験では、"標準的に850~900mm程度、操作能力が低い場合はこれでは困難"、3級試験では、"(操作能力を問わず)950mm以上必要"、という表現です。矛盾はしないものの、寸法が異なるので、それぞれ見慣れておいてくださいね。

開口幅員.png

とはいえ、どれだけの開口幅員が必要になるかは、実際には廊下の幅員との兼ね合いで決まります。廊下の幅員が広ければ、開口幅員はギリギリでも通れます。反対に廊下が狭い場合は開口幅員が広く必要です。ここで学習するのは、廊下の幅員が狭い場合(750~780mm)の開口幅員です。

覚えられそうですか?車いすの動きをイメージしながら周辺のスペースを把握してくださいね。でも、くれぐれもリオパラリンピックで活躍した車いす使用の選手たちをイメージしないでください!彼らの操作技術は超人的です。車いすも特殊な仕様です。一般的にはマネできませんのでご注意を。

第37回試験の申込み登録の締め切り(10月14日)が迫ってきましたね。お手続きをお忘れなく。いまは、追い込みに入る前の貴重な貯金タイムです。集中力を切らさないように学習を進めていきましょう。次号は、第37回試験の出題予想をします。お楽しみに!(駒木)

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