2016.8月号 熱中症と冷房病 からだのメカニズム

2016.7.29公開

皆さん、早くも夏バテ気味ではありませんか?夏本番の暑さはまだまだこれからですよ!今号は、秋の試験に向けての体調管理をかねて、熱中症と冷房病をミニ講義します。まずは体温調節のメカニズムから遡ってみましょう。

【体温調節のメカニズム】

人間の体温は、常に一定に保たれています。無意識のうちに脳や自律神経系(交感神経・副交感神経)が働いてコントロールしてくれているからです。そのコントロールの最初のステップは、「熱移動」です。

暑いなかで体温が上昇すると、大脳の体温調節中枢から自律神経系を介して「体温を下げろ」という命令が出ます。命令を受けるとまず、末梢の血管を拡げます。これにより体内をめぐる血流量が増え、皮膚に多くの血液が流れることで、体表面から熱が放出されます。これが、"からだの熱を体表面に移動させ、外気にさらして冷ます"という熱移動のメカニズムです。

ちなみにこのとき、血圧は下がります。ホースで水まきをするときを思い出すと、同じ水の量でも、ホースをつぶすと勢いが強くなり、戻すと弱くなりますよね。血圧は、血管内の血流の圧力ですから、水まきのホースと同様、(血液の総量が同じなら)血管が縮小すると上がり、拡張すると下がるのです。

続いて、血管を拡げても冷めないときには汗をかきます。汗はほとんどが水分ですね。体表面で水分が蒸発すると、そこで気化熱(蒸発に必要なエネルギー)が奪われ、体表面の温度が下がります。玄関先に水をまくと周囲の空気がヒンヤリしたり、シャワー浴が寒く感じられたりするのと同じ原理です。

ただし、短時間で大量に発汗するとからだの水分が減り、しだいに汗は出なくなります(脱水状態)。また、湿度が高く、風もない状態だと水分が蒸発しにくいので、気化熱は発生しません。このように、からだのなかからのコントロールには限界があり、それを超えると"お手上げ"状態に陥ります。

なお、寒いときには、これと反対の動きが起こります。寒さを感じると、血管を縮小させて血流量を減らし、熱の放出を防ぎます。これは体表面からからだの中心への熱移動です。このとき、血圧は上昇します。それでも足りないときには、からだを動かす体性神経系にも命令がいき、からだをガタガタと震わせて運動するなどして熱をつくりだします。

【熱中症の症状と予防対策】

熱中症は、体温調節の働きでは足りずに体内に熱がこもることで起こる、めまいやけいれん、頭痛、吐き気、意識障害といった症状の総称です。頭痛は自律神経系の"お手上げ"のサイン、吐き気や意識障害は脱水症状が進んだ証拠といえます。

注意したいのは、短時間で大量の汗をかいたときや、高温や高湿度の場所、陽の当たる場所、風通しが悪い場所に長時間いるときです。子どもや高齢者、持病のある人は特に体温調節機能が乱れやすく、高リスクです。また、体力のある人でも、暑さにからだが慣れていない時期や、激しい運動をしたとき、疲れているとき、体調がすぐれないときには要注意です。

予防対策はもちろん、からだを冷やすことです。屋内であれば、室温を28℃以下に保つこと、風通しをよくすること、水分を摂取することで防げます。屋外でもできるだけ直射日光を避けましょう。そして動脈が体表面の近くを通っている、首筋、腋の下、足のつけ根、足首などを冷やしましょう。

なお塩分は、通常の食事が摂れていれば十分に足りています。ただし、食欲がなく食べられなかったときや、大量に発汗したときには補充が必要です。またすでに熱中症の症状が現れているときには、塩分と糖分が少量混ざった水分(スポーツドリンクなど)が吸収しやすいのでオススメです。

【冷房病の症状と予防対策】

暑い屋外から冷房の効いた屋内に入った瞬間は、何とも言えない救われた気分になりますね。でもそのとき、からだは悲鳴をあげています。

冷房病は、冷房の効いた環境にいることで起こる、頭痛、肩こり、腰痛、疲労感、食欲不振、胃腸障害、不眠などの症状の総称です。正式な病名ではありませんが、"夏バテ"の最大の要因です。原因は、急激な温度変化の繰り返しに自律神経系が対応できなくなることです。

本来、季節が変わるのには数か月かかりますね。1日の気温も、数時間かけて徐々に変わっていくものです。しかし、真夏の屋外と冷房の効いた屋内の温度差は、一瞬にしてからだを襲います。それを1日のなかで何度も繰り返したら、体温調節機能が大混乱し、"お手上げ"状態になってしまいます。それによる自律神経系の不調が胃腸障害などとなって現れるのです。

予防対策は、自宅であれば、扇風機を併用して、温度を下げ過ぎないようにすることです。やむを得ず冷房が強いなかで過ごす場合には、冷たい飲み物を避けたり、首を温めたり(熱中症の冷やす対策と逆です)、運動したりして、からだを温めましょう。

どうしても温度差のある屋内外の行き来が多い場合は、たとえば、屋外では保冷剤で首を冷やし、屋内ではストールで首を温める、といった対策によって急激な温度変化を避けましょう。

おわかりいただけましたか?からだに悪いのは、急激な変化や長時間のガマンです。自律神経系が"お手上げ"状態になる前に、意識的にいたわってくださいね。

福祉住環境コーディネーターの試験では、2級に熱中症予防の室内温度が出てきます。28℃以下に設定するということを覚えておいてください。冷房と上手にお付き合いして、この夏を元気に乗り切りましょう!(駒木)

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