2016.5月号 認知症施策に詳しくなる!

認知症施策「新オレンジプラン」のなかには、「認知症初期集中支援チーム」「認知症地域支援推進員」「認知症疾患医療センター」等々、さまざまな機関が出てきます。学習する身としては辛いところですね。同じく、制度改正を追いかける講師も辛いです(涙)。

なぜ、これらの機関が設置されたのか、またその役割は何なのか、理解を深めていただくために、今回は「認知症初期集中支援チーム」を取り上げてミニ講義します。

【認知症高齢者支援の難しさ】

突然ですが、認知症になったら、病院のどの診療科に行けばよいと思いますか?

答えは、精神科です。認知症は、医学的な分類では精神科の領域に入ります。

あなたが病気知らずに80年生きてきたとして、突然、「精神科に行きなさい」といわれたら、「はい」と素直に従えるでしょうか。多くの人にとって、それはとても難しいことです。最近では、聞こえの優しい"もの忘れ外来"などもありますが、それでもハードルは高いですね。

特に現在の高齢者の方たちがお若かった時代には、精神疾患に対する偏見が今よりも強くありました。個人の考え方の問題ではなく、社会全体のとらえ方が無理解であったということです。

そこに加えて認知症には、"自覚がない"という特徴があります。初期のうちにはもの忘れを自覚しますが、エピソード記憶が障害されると、忘れていること自体を忘れていきます。また本人のみならず、家族が否認し、治るはずだと過剰に期待したり、関わりから逃げたりすることもあります。このような状況下で、必要な治療や介護につながらず、事態が悪化することが多いのです。

【初期対応のための認知症初期集中支援チーム】

そこで厚生労働省が"危機への事後的対応から、早期支援機能と危機回避支援機能を"と講じた対策のひとつが「認知症初期集中支援チーム」です。このチームは、市町村が主体となって設置し、保健師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士、介護福祉士などの医療保健福祉関係者で実務経験や研修の受講といった要件を満たした人(例外あり)がチーム員となります。活動は主に支援対象者の自宅を訪問し、必要な初期対応を行うことです。

具体的には、専門医を受診する動機づけ、介護サービスの利用勧奨、その他の説明や助言を行います。また「身体を整えるケア」として、直接的に食事や水分の摂取、生活環境の整備、服薬管理なども行います。そして医療や介護のサービスが安定的に提供される状態になれば終了します。

チーム名にある「初期」とは、認知症の発症からみた初期というだけでなく、その人との関わりの初期という意味をもち、「集中」は、おおむね6か月をさします。支援対象者は、認知症の臨床診断(鑑別診断や治療)を受けていない人、介護保険サービスにつながっていない人、あるいは中断している人などです。

なお、"介護保険サービスにつながっていない"とは、担当のケアマネジャーがいないことを意味します。担当のケアマネジャーさえいれば、認知症が発症・悪化しても、医療機関や介護サービスを紹介してもらえます。つまり初期対応は、ケアマネジャーの支援を受けていない人への対応が主であるといえます。

【市町村や地域包括支援センターへ情報を】

このように行政主導で体制を整えても、対象者を見つけられなければ名ばかりで終わってしまいます。対象者を見つけ出すためには、近隣住民や家族からの情報提供がとても重要です。もしも近所の高齢者で認知症が疑われたり、ケアマネジャーがいるのかどうか不明だったりするときは、ためらわずに市町村に連絡しましょう。

連絡先の役所の組織体系がよくわからないという場合は、地域包括支援センターを活用するとよいでしょう。認知症初期集中支援チーム自体が地域包括支援センターに設置されている場合もありますし、そうでない場合でも、情報を受け取って、関係機関と連携してくれます。

近年、社会問題化しているごみ屋敷の住人や、近所迷惑な行為・万引きなどの罪を犯す人のなかには、認知症高齢者も多いといわれています。認知症と支援体制のことを学習した皆さんは、高齢者の異変への気づきの視点をもって、早期対応の一端を担ってください。

そして、試験対策としても「認知症初期集中支援チーム」を覚えておいてくださいね。 (駒木)

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